FC2ブログ

Another Story~傷の兜~ Part.10

誰かが、言った。

アナタの父君は、本当に優秀な狩人だった、と。

この「新大陸」と、本国の人間からはそう呼ばれる地に生息する、強大な竜種を皮切りに、果ては小さな昆虫を含む小動物まで―――凡そ卵生である生物ならば、その習性を事細かに調査してみせたのだ、と。
それは、ある竜種の繫殖期の特定から始まり、それが昼行性なのかそれとも夜行性なのか?食性から凡その生息域を割り出し、そしてそれらの習性を詳細に記述した資料は、今もなお、狩人達の中で狩猟を成功へと導く為の、行商人達が生き残る為の貴重な情報として、今も尚、生き続けている。

けれど、俺にはそんな父の偉大さが、分からない。

俺に物心が付いた頃には、その程度の事、は知っていて当然な情報でしか、なかったのだから。


誰かが、言った。

アナタの母君は、本当に素晴らしい学者だった、と。

卵が持つ栄養を研究し、これを数値化。それぞれの栄養素がもたらす効能を調査した結果、この地に住む人間の健康寿命を飛躍的に伸ばすことができたのだ、と。
卵の栄養素を事細かに調査した報告書は、現在では料理に、そして治療における薬剤を調合する為の必需品として、多岐に渡って重宝され、残り続けている。

けれど、オレにはそんな母の素晴らしさが、分からない。

オレに物心が付いた頃には、卵の栄養価が高い―――なんて事は、当たり前の知識でしか、なかったのだから。


誰かが、言った。

アナタのご両親は、本当に慈悲深く、正にこの地に住む者の誇りだった、と。

面倒見が良いとされた両親は、各分野における相談役としての立場にいた、らしい。
困っている人は放っては置けない―――それが、二人の口癖だった、らしい。

彼らの調査、研究の幅はこの新大陸だけに留まる事はなく、必要とあらば遠い本国にまで積極的に足を運んでいたのだ、という。
それらの功績の成果として、十分すぎる程の財をこの地にもたらし、結果として、この新大陸での調査の発展に、大きく貢献してきたのだ、と。

けれど、おれには、分からない。

おれの最初の記憶にさえ、両親の姿は、何処にも居はしない、のだから。



本当に、分からない。



だって、わたしが知る限り、皆が誇れる両親は、自分には呪いしか、遺してはくれなかった、のだから―――





◇◆◇◆◇◆





自身が良く知る砂漠と比べてしまえばだいぶマシではあるが、乾燥により荒廃した大蟻塚の夜は、肌を刺すように寒い。
この地の大部分は、全体的に水気が少ないのだ。
大気は勿論の事、地表にさえ水分が無いのだから、それは当然といえば、当然なのだろうが。

砂漠と呼ばれる土地において、昼夜の温度差が激しい理由としては、その土地が含有する水分量が、大きく影響している。
これには熱容量が大きく、かつ地表から放射される赤外線を吸収する性質を持つ水の存在が大きく関係するらしいのだが―――ようは、石ころや空気よりかは水は熱くなりにくいけど、冷めにくいって事で良いんだろ?(By 俺ちゃん)

太陽からの日射を遮蔽する物が少ない砂漠では、日中の内に熱せられ続けた地表から立ち昇る熱気が、露骨なまでに牙を剥き、そして太陽が沈んでしまえば地表から放射される熱を遮る物が少ない以上、これもまた露骨なまでに肌を刺し続ける、悪辣な環境を以って循環している。

それでも、暑さや寒さに耐える為の必需品である、クーラードリンクやホットドリンクが必須―――とまでにはならないのは、此処から然程離れてはいない、かの古代樹の森からこの地の一部へ流れ込んでいる、僅かな水源があるおかげ、なのだろう。


テントから出て正面に焚いた火の傍で、肩に手を抱き続けている人影に、近づく。
砂漠から吹く冷たい砂を含んだ風に曝されながらも、頑なにその場を離れようとはしないのは、一重に熱源となる焚火が、テントには無いからに他ならない。

「おつかれ。今ある物じゃ玉子酒しか作れなかったけど、良いかな?」

「玉子酒って・・・任務中に酒を呑むだなんて、アナタ一体何を考えているの?それに、別に体調を崩してるワケでもないのに、玉子酒って」

「あっそ、じゃあ俺ちゃんが貰う。意外と温まるもんだけど、任務中に飲酒なんて不良な真似が出来ない、真面目が服着て歩いているようなゲキマブちゃんには、こんなもん呑ませられねーわなー?」


差し出した反対の手には既に自分の分の玉子酒があるが、要らないというのであれば、仕方がない。
そもそもこんな時―――それこそ、あのクソガキが居ない時でもねーと、酒なんて堂々と呑めないのだから、良い口実が出来たと思えばお釣りが来る、ってもんだ。

そうして二つ目のジョッキを口に運ぼうとした所で、焚火の前で肩を震わせた、今にも泣きそうな人影から、小さな声で。


「・・・待って。やっぱり、私にも・・・」

「んー?どうしたのかなー?優等生なゲキマブちゃんには任務中に飲酒なんてワルは、出来ないんじゃなかったのかなー?」

「飲ませて、お願い。」

そうよ、これは仕方がないこと。体調を整えて任務を遂行する為なんだから・・・と、ぶつぶつと戯言に言いながら、優等生は熱いジョッキを両手で抱えながら、ちびちびと玉子酒を含んでいた。


「ところで、だ。あの痕跡の事は、何か分かりそうか?」


親指で背に指差した先―――焚火から少し離れたその先にはいくつか、例の何かの棘らしい痕跡が、鎮座している。
現状装備しているボーンランスのそれよりも遥かに鋭いソレは、集めた痕跡の素材だけでも十分に強化出来そうな硬度と、そして鋭利さを誇っていた。


「うーん、残念ながら。・・・でも、不思議な素材ね。牙でも、ううん・・・爪とも少し違うみたい・・・」


あの不気味な赤色に染まった夕陽が沈んでから、そう幾ばくも経っていない、大蟻塚から見て南方に位置するキャンプの地。
先程手渡した、例の痕跡を片方の掌の上でクルクルと弄りながら、過去に文献で見たであろう竜種の物と合致しないか?と、真剣に照合を続けているサラの姿が、そこにある。


「最初俺ちゃんは轟竜の牙なんじゃねーか?と思ったんだが・・・それにしちゃあちとデカ過ぎるし、そもそもこんな綺麗に何本も一斉に抜ける筈がねー。コイツを取った所には、アレ特有の歯型が付いているワケでもなかったからな。」

「でも、何かを擦り付けたような跡があったのよね?・・・それだと、考えられるとしたら、あの飛竜種―――ほら、アレよ。えーと、何て言ったかな?―――あーん、もう!喉のココまで名前が出かかってるのに!」

「更年期障害を拗らせるにはまだ20年ばかし早えーぞゲキマブちゃん?けど、アンタの言いたいヤツの名前には心当たりがあるから当ててやろう―――ずばり、「ヒ」から始まる早口言葉みてーな名前だ!」

「・・・そう!それよそれ!・・・ヒュず・・・ヒジ・・・ヒュジキュ―――鹿尾菜!」

「盛大にドヤ顔で噛んだ上に最後は只の食材になっちゃった!?ヒュジヒ・・・ヒジュキ・・・ヒジ・・・針纏竜だよ!」



針纏竜“ヒュジキキ”―――今となって懐かしい、現大陸の高地や、砂漠に生息が確認されているものの、その目撃例は極端に少ない、謎の多い飛竜種である。


情報量が少ない事に関しては、そもそもの個体数が少なく、遭遇する絶対数が異常に少ない事もあるのだろうが、それ以上に、狡猾にして獰猛な奴等と対峙して、無事に帰還出来た者が極少数でしかない―――という点が、大半を占める。
全身に生えた体毛を、鉄板程度ならば容易く貫き通せる硬度まで硬化させ、それを体内の毒素を含ませた上で巻き菱の様に展開させる―――卑怯という単語がこれ程似合う竜種は、他には居ない。とすら称される狡猾なモンスターだ。

多種多様な毒素を帯びた体毛で付けられた裂傷には、一般的に流通している解毒草から抽出される解毒薬では効果が乏しく、あの迅竜“ナーガ・クーガ”の俊敏性と引けを取らない機敏な“針纏竜”を目にしたのであれば、何も考えずに兎に角逃げろ。というのが、大陸における鉄則である。
たったそれだけの情報を手にする為に散っていった調査隊の数は、自身が知るだけでも両の手では数え切れない。



「・・・本当にそのヒュジュ―――針纏竜がこの地に居るんだとしたら、不味いわね。」

「そう全くだ、だから撤退しよう大賛成!そんなニンジャみてーなおっかねーバケモンは俺ちゃん達の手に負えるワケがねーし、こんな大蟻塚の調査は打ち止めにして永久に此処は封鎖した方が皆ヘァーピィに暮らせるってもんだ!泥は道すがら採ったから問題なし!最低限の依頼内容は達成してるし、奴が居るってんならボルボロスなんて、相手にしてられねーよ。」

「待って、それは駄目よ。」

「・・・why?ちょっと待て。待ってくれよゲキマブちゃん?・・・万が一だ。万一あんな棘のバケモンを相手にするんにゃぁ、極々一般ピーポーな俺ちゃんなんかじゃ、シュンコロの串刺=シンイチ確定だぜ?それだけじゃねー、おっかねーギルド様と法廷で会わなくちゃ行けなくなっちまう!仮に戦うってーんなら俺ちゃんなんかじゃなくて、全身鉄で出来たアメコミヒーローか魔法が使えるジャパニーズ=ニンジャでも雇えってんだ!」


仮にあの悪名高い針纏竜が生息している―――というのであれば、撤退する以外に道は無い。
実際に奴と対峙した経験も無く、ましてや最低限の装備さえ整っていないのだ。
であれば、今回の疑わしい痕跡を入手した時点で、ギルドにそういった危険な存在が居る事を提示出来るだけでも、十分過ぎる情報な筈―――


「まだ、あの子が戻ってきていないの・・・分かるでしょ?」

「クソ、・・・これだから、ガキは嫌いなんだ。」


そう。まだ、あの忌々しい組織の若様は戻ってきてはいない。
土砂竜の居場所を確認する為に荒野中を周ってきた―――とはいえ結局見つけられなった自分よりも、ただ巣の在り処を確認しに行っただけのあれの帰りが遅いのは、どう考えてもおかしい。

流石に、物珍しさに誘われて迷子になっちゃったー。みたいな事にはなっていないとは、思いたいが。





◇◆◇◆◇◆





土砂竜“ボルボロス”は、乾燥した地に生息してはいるものの、水気のある地帯を好むモンスターだ。
泥を纏う習性を得た所で極限の乾燥にはやはり適応しきれなかったのか、生命を維持する為に必要不可欠な大量の昆虫類が荒廃した土地には少なかったが為なのか、は正直な所分からないが、―――巣はぬかるんだ湿地帯に作る傾向にあった。


「やっぱり、こっちには来てたみてーだな。」


泥とナニカが混ざり合い、ヘドロ状に堆積しきった沼地へと、誰かの足跡は続いていた。
あれからキャンプ地より二手に別れて、既に二刻は過ぎているが、それでもこうして足跡を見つけられたのは、この泥地が例の土砂竜の縄張りである証―――きめ細かな泥が豊富な証拠、ともいえる。

大人よりかは小さい、人間の足跡を見て、それが十中八九、目的の人物の物だろうと、確信する。
足跡は堆積しきった泥の先―――ではなく、岩盤を走るようにして転々と続いているのを、微かに暗い月明かりが、照らしていた。


・・・。


しかし、アレだな。
マイペースちゃんといいクソガキといい、此処に居る人間は揃いも揃って、大道芸人か何かかよ。

イヤ、サラを含む編纂者や研究者は兎も角、裏道で入国パスした自分や恐らくそんな曲芸じみた真似はまず出来ないであろう、ちんちくりん(そういや確か、アイツも半分裏道入国みたいなもんだったっけ?)等も居るのは事実だが・・・。
最近は周りに色んな意味で頭がおかしい連中が多すぎて、俺ちゃんの価値観パラメータが振り切れてしまっているらしい。


「今更そんな事言っても仕方ねーか、さて・・・と。」


常識の尺度を今一度改めなくてはならないのは億劫だが、今はそんな事に愚痴を付いている場合ではない。

道中で拾った身の丈以上はある朽木の枝を、前方の泥の中に徐に差し込む。
ずぶずぶと沈んでいくそれが浅いのかどうか、それを確かめながら慎重に進んでいく必要があるのだ。

ボルボロスが生息する泥地には、所謂底無し沼が多い。
あの巨体で身を隠す為に、縄張り周辺の泥を引っ切り無しに掘り進んでいやがるのだから、下手にそんな所に嵌ってしまえば、まず助からない。
それこそ、あの岩盤に付いた足跡の主の様な曲芸が出来るのであれば、あるいは底無し沼に一切嵌まらずに突き進めるラッキー体質であれば、そもそもこんな真似をする必要も無いのだが、試そうにも失敗して死んだらセーブポイントへリスポーンしてしまえる異能力者でもない限り、そんな馬鹿げた真似等、出来る筈もない。


「こうしてる間にひょっこり顔でも出してくれれば、そもそもこんな事をやる必要もねーんだけどよ・・・ったく、一体何処で道草食っていやがるんですかねー?」


ずぶずぶと、朽ち枝を前方に突き刺しながらのぼやきに、返答する者は居ない。

編纂者のサラは、今頃はキャンプの中で夢の国へでも旅立っている筈だ。
温めた元気ドリンコでもなく焼いたばかりのこんがり肉でもない、酒に弱いアレに酒を呑ませたのは正解だった。

前者を出さなかったのは若様が戻って来ない時点で、ほぼ間違いなくついて来るだろうと、確信したから。
後者は未だに肉を食べられる様になったのか?それがそもそも、分からなかったから。
あと、こんな夜中に肉を出したらカロリーが~とか言って、要らぬお𠮟りを受けるのが見え透いているから、だが。


・・・。


・・・自分は今後、一体どれだけの人間のトラウマを抉る羽目になるのだろうか?

多かれ少なかれ、この先で知り合った連中が、自分のこの兜の下を見る可能性は、決してゼロでは無い。
汚れ仕事をしていた以前は、そもそも顔を見た連中は口封じの為に片っ端から仕留めても問題がなかったからこそ、こんな事に今更になって頭を抱える自分の無能さに、反吐が出る。


あの頃に―――それこそ、あの憎い牙を持つ太陽に出くわすよりも前に・・・イヤ、故郷を捨てざるを得なくなった、それ以前に戻れれば、それはどれだけ救われるのだろう。
アレから声を奪わずに済む未来を見る事が出来たのであれば、それはどんなに救われたのだろう。
もしくは、あの憎たらしい糞猫が襲来するのが、後5年も遅れていたならば、あの傷を完治出来るだけの技術は確立した、というのに。

・・・だが、それは最早どうしようもない、叶う筈の無い願い、でしかない。
人間は時間を遡る事なんて、出来る筈がない、のだから。

そもそも自分は、13年も前に死んだ―――亡霊でしかない、のだ。
それ以上でも以下でも、ない。
現にドンドルマのとある墓場にある、戦死した名を刻んだ慰霊碑には、当の昔に捨てた筈の、「―――」という名が、刻まれている。

それを今更になって、再び使う事になろうとは、な・・・。
だからだろうか?長らく呼ばれる事が無かった名で呼ばれ、目的とは別の任務に明け暮れている内に、それまではどうでも良かった他人の事が、少々気掛かりになってしまった。

柄にも無い、と自分でも思う。
そうして良い資格なんて無い、と、今でも思う。

それでも悪態をつき、罵り、蔑まれる様に立ち回っても、アイツ等はしつこく付き纏ってくるのが―――久しく忘れていた、捨て去った筈のモノを思い出される、ようで。



ふと、冷たい、微かに腐乱した泥と生き物の臭いを含んだ風が、鼻をつく。

微かに不快さを漂わせる臭いが、それまで辛うじて収まっていた―――肌を鋭く壊す痛みを再発させるのに、内心で毒づき、そして確信する。


・・・ナニカ、竜種が近くに居る。

肌が燻るような痛みが走るのは、大抵は竜種の気配を感じる時、だ。
あまりにも不規則で確実性は無いものの、危険が近づく度にこの身体は、あのクソッタレな太陽と対峙して以来、肌を焼かれる痛みが奔るようになっていた。
・・・どうやら、あの糞猫は、相当に俺の事を殺したいらしい。

そんな回りくどい真似をする位ならばいっそ、あちらから出向いてくれれば、こちらは捜す手間も省けるというのに。
尤も、仮にアレを殺せた所で、この痛みが収まる保障なんてモノは、それこそ何処にも無いのだが。



慎重に、音を立てない様に息を殺して、岩盤へと近づき、その影から悪寒のする先を警戒する。
現状では周囲には目立った生き物の気配は、感じられない。

聞こえるのは精々、遠くで響くニクイドリのけたたましい鳴き声か、名前も分からない小さな羽虫の鈴の様な音色位、しかない。
それでも、

ズキリ、と顔の傷が、鈍い痛みを奔らせながら蠢く。
それは比喩ではなく、実際に火傷の痕が再燃して皮膚を壊し、同時に浴びた龍の血が異常なまでの代謝を促しているから、だ。



・・・自分はあの時、二つの呪いをかけられた。


一つは、牙を持つ太陽が有する、周囲を焼き尽くす異能によるもの。
通常の竜種のモノとは大きくかけ離れた、生態系のピラミッドから除外されるに至った、超常的な能力で付けられた火傷が、未だにその痕を燻り続けている。

もう一つは、その能力の源である血を浴びたが為に、異常な代謝能力を得てしまった事。
最後の最後で一矢報いようと、奴の片目を深々と抉った際に被った返り血は、火傷で爛れ剝き出しとなった部位から身体へと浸透してしまった、らしい。

本来、竜種の血液は、劇毒でしかないのだが、この身は不思議と拒絶される事もなく、馴染んでしまった。


人の身とは比較にもならない、長い寿命と代謝を持つ竜という生き物。
部位を斬り落とされたとしても死にさえしなければ脱皮を繰り返し、何れは身体の再生を可能とする、人よりも遥かに優れた肉体を持つ存在。
不老でも、それこそ不死でもないが、只の人間と比べれば圧倒的なそれを見て、人間が一体何を思うかは、想像に難くない。

過去、そして現在に至るまで、その力を僅かにでも手に入れようと、かつての強欲な人間達は、貪欲なまでに竜種の血肉を欲した。

生き血を啜り、生肉を食らい、そして更にはその血肉を移植した。
それは、より長らく生き延びる為に、不老不死という神秘を手中に入れる為に。

それが一体どういった末路を追ったかは、「劇毒」といった通りだ。

竜の血肉への耐性が無ければ、大抵は蝕まれて命を落とす。
だが、そうなった方が幸運なのかもしれない。

中途半端に適応しようものならば、その身体に異常をきたし、人間を辞める事になりかねない。

あるモノは、皮膚が爛れ落ちて顔を失い、五感までも失った蠢く肉達磨に成り果てた。
あるモノは、身体中にある穴という穴から毒を垂れ流す、害しか生まない化物に変わった。
あるモノは、潰しても切断しても再生し続ける、移植に役立つジャンク部品に、その用途を変えた。

それでも、無様を繰り返しても諦めがつかなかった一部の人間は、より自分達に近い―――竜人と呼ばれる存在を襲い、今でも同様の行為を試みている。
只の人間よりも竜種に近い彼らが、今現在その数を減らし続けているのは、そういった経緯があるからなのだ、と。
そして、それが原因の一因で、竜人と人間との溝は、未だに根深く残り続けている。


―――そしてそれは、その劇毒に耐え抜いた自分の様な人間もまた、同じなのだ。

自分では相当な真似をしても死ねない身体、燻ぶり続ける呪いと生き長らえる代謝に苛まれるこの身を羨み、妬む者が居るのも事実。
この身体に戦闘によるモノではなく、無様な傷が多く残るのは、そうした恨みや妬みによるモノが大半を占める、のだから。

想像してみたら、いい。
貴族の身に生まれ、望むべくして不死に近い、自殺を試みても限りなく死ににくい存在となった元は見目麗しい令嬢が、一体どういう末路を辿るのか、を。

副作用で老化が止まり、既に半世紀以上の時を生き続けるその異物は、今となってはその体質を解明する事に躍起となる狂った学者共に毎日の様に肉塊に加工され、またその体質を持つ子孫を残そうと躍起になる上流貴族共の慰み物にされ続けているという、喜劇を。


半ば狂ってしまっていながらも必死に救いを求めてきたアレは、あの歯の浮く様な甘ちゃんに引き継いだ依頼は、一体どういった結末を迎えた事だろう。

決して殺せなかった―――殺しても死ねないアレは、果たして救われたのだろうか?
今頃アレの事だから、殺さずに救おうと、確実に敗訴が確定している裁判に、無駄な金を流す準備でもしているのだろうな・・・。



・・・結論も出せない癖に、考えすぎだ。
此処に来てから、懐かしいモノを立て続けに見てきたせいで、余計なモノが頭の中で反芻するようになった。

そんなモノ、今は考えるだけ無駄だ。
思い切り頭を横に振り、思考を切り替えて、五感を研ぎ澄ます事に、集中する。


歩を進める度に、傷の疼きが、より酷くなる。
傷の痛みはいつの間にか頭痛へと変わっていき、元の痛覚の原因が果たして火傷のモノだったのかも、分からなくなった頃だった。




視界の先には、古枝が積み重ねた、土砂竜のモノらしきみずぼらしい巣が、あった。



夥しい血痕と、巣の中央にあった卵が全て潰れた―――無残な巣が。





◇◆◇◆◇◆





夥しい血痕に塗れた、かつて巣だったモノを目の当たりにして、直ぐに思考を切り替える。

惚けている場合じゃ、ない。
重要なのは、この惨状を、誰がやったのか?


周囲の岩盤には真新しい―――荒い刃物で力任せに抉ったかの様な傷が、無数に刻まれている。
これを見る限りだと、とても人間によるモノでも、土砂竜のモノでも無い。
ましてや、巣を襲う確率が非常に高い、掻鳥の仕業とも思えない。
仮に侵入者に対して土砂竜が暴れたとしても、岩盤にこんな風に抉るような、傷を付けられる鋭い部位は何処にも無いのだ。
そもそも掻鳥の仕業ならば、卵は割られずに全て無くなっている事だろう。


ならば、この地の主であろう角竜の仕業かといえば、それにも疑念が残る。
水気を酷く嫌うかの角竜が、幾ら縄張りを侵されたとはいえ、こんな所にまで執拗に襲い掛かる可能性は、限りなく低い。


だとすると、先程の痕跡の主の仕業か?


・・・可能性としては、一番高いだろう。

無数の鋭利な棘をそこら中にばら撒いていた、異質な存在。
縄張りを主張するにしても、あまりにも自傷行為に過ぎるソレは。
一体、何を思って残したのかも、見当すら掴めない。

それが、只々、不気味だった。



・・・?


そこで、ふと疑問に思う。


此処からキャンプまでは、そう離れてはいないのだ。
それであるならば、アレは何故、未だに戻っては来なかったのか?

道が分からなくなった―――そんな筈は無い。
この地に生まれた頃から居るらしいアレにとって此処は、それこそ庭みたいなものだ。

何故、これだけのモノを見ておきながら、報告に来なかった?
これだけの惨状を目にしておきながら、アレは何故―――、




「・・・HEY?一体、どういうつもりだ?」

「・・・。」

「母ちゃんから教わらなかったのか?刃物を人に向けちゃいけません―――ってな?イヤ、この場合は軽穹か?・・・まあ、どっちでも、結局変わらねーんだけどよ。」


背後に投げかけた質問に、返答は無い。
ただ、微かな鉄の臭いが、くぐもった声色と共に、砂を帯びた風に吹かれて、消えていく。


「俺ちゃん、そういうの嫌いなんだわ。だんまり決められて露骨に無視されるの。寂しくてもう辛抱堪らないから、ついつい口が動いちゃう!―――そういえばお前、自分の母ちゃんの事、知らないんだっけw」




背後へ振り向きながら吐いた軽口に、薬莢の落ちる音だけが、返答した。












・・・。


・・・・・・。


いがみ合う二人。一ヶ月。何も起きないはずがなく―――とは、良く言った所でしょうか(´・ω・`)

一方は強制し、もう一方はそもそも関わりたくもないので露骨に拒絶してましたし、何かの火種があれば暴発もするでしょう。
もっとも、今回のガンモさんは、ただのとばっちりですが。
まあ、スキップしながら地雷を踏み抜いた結果なので、当然ちゃ当然だわな(´・ω・`)


しかし、キャラが勝手に動いたり、テコでも動きそうになかったりで、思った以上に話が進行してません・・・(´;ω;`)ブワッ
なので、本編でgkbrしながら膝を抱えているあの学者の救出はまだ進みそうにありません、南無。
そこら辺がどうにもいかずに、やっぱり笛ちゃん文才ねーわ・・・。と思ったりしますね。


例の棘が突き刺さった痕跡を見て、ガンモ達は既知のあるモンスターの存在と推察していますが、これは完全にミスリード。
途中で挙がったモンスターは、今は行けない隣にある―――Fの世界にしか存在しません(´・ω・`)

どんなモンスターなのか、気になる方はこちらの動画をご覧になられると、そのヤバさを感じられるかと。

具体的には、毒カガチとネギを足してベリオで割ったみたいな?
いや、どんな(カオス)カクテルやねん・・・(´・ω・`)

ただ、アレがパッケージモンスターじゃなくて、前情報もない状態だったら、あのヒジキの輸入ワンチャンあるで!と思ったのは、私だけでは無いハズ。


さて今回は、傷の兜が「殺しても死なない」とまで言われる所以について、いい加減に触れておこうと思ったので、ちょいと本筋から外れた次第です(´・ω・`)
更に言えば、それが更新が遅れた原因です!(マテ


このままだと、モンハン界の第4の壁をぶち破る超絶人気ヒーロー(デップーさん)でしかなくなってしまうのでね?
もしくは異世界転生系主人公なのに、俺TUEEEE無双は基本出来ないスバルきゅんあたりか(リゼロ2期楽しみです♪)


作中の世界観では、竜の血は「一般的には劇毒」とされているので、普段は素材としてのみ流通しています。
肉はまあ、一部は実際に食材としてゲーム内でも出されているので、処理さえ「キチンとしてしまえば」セーフなのでしょう。

ただ、人間よりも遥かに寿命が長くて代謝も異常に高い(人間に捕獲玉は確実に致死量でしょう・・・)竜種を見て、欲深な人がどう思うかはお察しレベル(´・ω・`)
実際リアルでも、カメとかヘビとか使って、色々と薬作ってますものねぇ・・・。

一般的に劇毒とあるように、直接体内に入れたら拒絶反応は当然あります。
ドナーでもない人の血液を輸血―――とか、現実世界でも十分に起こり得る話ですが、モンスター素材の説明を見る限りだと、一部の素材には剥ぎ取った後も永遠に動き続けるなんてモノもありますし、そんなもんを体内に入れた日にゃあ、普通に考えたらまず死にますわな(´・ω・`)
活きの良い素材をそのまま活用したら、より良い効能が―――とか思うのは大体、現実世界と変わりません。

体に取り入れた際の副作用として、人間じゃなくなった例に関しては、“人魚シリーズのなりそこない”とか“彼岸島のアマルガム”とか、そういうのをイメージしてもらうと、非常に分かりやすいのではないかと(´・ω・`)
もしくはデップーさん。

要は、一般的なファンタジー世界観の人魚の肉とか、賢者の石みたいなもんです(´・ω・`)
良薬は口に苦し―――まあ、苦いどころじゃ済まないですが。

仮に超絶強運を引いて、ソレが高い水準で適応(某ソシャゲの新登場ユニットピックアップガチャが当たる確率位?)すると、人間の容姿そのままにして不老不死に近い身体に変異する、という感じ。

そんな博打をやってでも欲望に忠実な人は普通にやろうとするし、ちょいと度胸が無い人でも代わりに使えそうな人間が居れば、それでまずは試そうとするので、世界の裏側では結構な頻度で相当惨い真似をしてそう。
そして、「運が悪くほぼ理想的な状態でそうなった人間は、マッドなお医者さんやより身分の高い人の玩具にされる」―――まではまあ、お約束。

仮に絶対的な王様だったとしても、嫉妬で結託した貴族連中にあの手この手で地位を堕とされて奴隷同然に以下略(ry
程度の事は、普通にやりそう(´・ω・`)

多分、嫉妬とか探究心とかが色々と入り混じった強欲に、尊厳とかその他諸々をズタボロにされるコト請け合いです。
そこら辺の描写を細かく書くとしたら、間違いなくR-18Gタグが必要になりますねぇ・・・。書けねー。


そういった意味では、傷の兜さんは、完全な被害者といえるでしょう。
テオにゃんへ最期の悪足搔きとして、片目を潰してしまったのが、人生スーパーベリーハードモードに突入した原因。
もっとも、それが無ければそもそも、今まで生きられていないですが(´・ω・`)

因みに、テオにゃんの火傷でにゃんにゃんされてただけなら、戦闘後の翌日には骨まで焼かれてセルフ火葬されてます。
その場合は、本当の英雄として祀り上げられて変な尾鰭が付いた後に、かなり美化された銅像とか建ってるレベル。
でも実際は、それだとテオにゃんが角殴られる以外にはまともに痛い目に遭っていないので、ガンモさんを弄び殺した後にそのまま面白おかしく、ちょっとばかりイラついた腹いせにドンドルマ全土を火の海にして\キャッキャ/する全滅ENDになってる・・・(´・ω・`)


けど、結局はそうはならずに、見た感じは「近年稀にみる完全に適応した貴重なサンプルになっている」のがバレて以来、マッドなお医者さんズや欲深上位階級さんズと、マブダチ(という名の玩具)になった、という現実。
痛みで目が覚めたら知らない天井と、喜々とした満面の笑みを浮かべるマッドなお医者さんズに歓迎されるとか、それ一体なんてホラー?:(´◦ω◦`):gkbr
その過程で生きていられると流石に法律的にも色々と不味いので、戸籍とかその他諸々は傷の兜さんの同意無しに\ポイ/されちゃってます。


結果として異常な再生能力を得たものの、火傷の進行度とは絶妙な所で均衡状態を保っている状態なので、返り血を浴びる以前の傷までは治しきれない―――という感じです。
そして、緊張や体調の不良等といった、何かしらの影響でその均衡が崩れると、どっちかに傾いて痛みが~となる模様(´・ω・`)

なので、作中で感じている竜の気配が~というのは、只の勘違い。
でも、ヤベーお仕事に従事していただけあって、経験を活かした「危険予知だけは本物」なので、当たらざるとも遠からず。
スゲーのか、何なのか、これもう分かんねーな。


それでも本当に命の危機に瀕した場合は、生存能力が火事場の馬鹿力を発動して、代謝がより活性化されたりするのですが、大抵腕とかを何処かに落っことしてたり、腹に穴が開いたりしているので、そこまでカバー出来ません。哀れ。
もはや専属医と言っていいのか。腐れ縁のマッドなお医者さん達が、まるでずっと欲しかったモノを遂に誕生日プレゼントで貰ったときの子供のように目をキラキラさせながら、その傷の兜さんの人間離れした代謝を前に手をワキワキさせているので、尚更。

現状では、新大陸に顔見知りのお医者さんズはいないので今のところは無事ですが、多分そういった気質の人にバレた時点で、その人達が確実に第二、第三のマッドさんズへワープ進化する。
人間は探究心の塊だからね、仕方ないね(´・ω・`)


此処まで書いた時点でお察しの通り、テオにゃんから火傷を貰わずに返り血を浴びてたら、傷の兜さんには異常な代謝に適応しきれる要素がないので多分、再生というか膨張をし続ける死なない肉塊に変わってる(´・ω・`)

その場合のルート分岐は、甘ちゃん君が途中で上官の命令を無視して、唯一無二の親友と信じたガンモさんに同行しようとした場合―――になるでしょう。
その場合はロリレラ坊も甘ちゃん君に途中で見つかって帰されるので来る事はないし、二体一で善戦した末にやっぱりガンモさんは、調子に乗ってトドメを刺そうとするから、最終的に龍の血を浴びて自滅する(´・ω・`)
その時点だと甘ちゃん君はテオにゃんに火傷にされて死にかけるけど、呪いの主はガンモさんが殺してるので、最終的には傷も残らずに助かります。

テオにゃん倒せば、火傷の進行は止まります。
でも、倒したら血の効果はそのままなので、他に何らかの手段を講じないと、北斗神拳食らったモブよろしく永遠に肉体が膨張と再生し続けます。合掌。


どっちに転んでも絶望漂うガンモさんが、唯一本当の意味で助かるルート分岐点を敢えて提示するとしたら、そもそも幼少期のロリレラ坊と出会って懐かれるようになるのを、マジ全力で阻止する所まで遡るしかねー。
でも、多分本人にはそれが出来ないから、現状が一番、彼らしく居られる方法ぽい(´・ω・`)

・・・ガンモさん、アンタってホント救われねーな!?(お前が言うな


余談ですが、傷の兜さんが道中で気にかけていた元は見目麗しい令嬢さんは、後に甘ちゃん君がキチンと救ってます。
本人がその時に望んだ方法―――で、なので、それが一体どういった形になったのかは、依頼主のその時の精神状態次第(´・ω・`)

まあ、イケメン中年の他人には超絶☆甘ちゃんな部隊長君の事ですから、皆さんが想像する―――最高の救済方法を実行している、と思います。


それでは、今回はこの辺で。
ご視聴ありがとうございました!




人気ブログランキング



P.S.

ダレカ、ガンモさんを救ってやってくだしあ(´;ω;`)ウッ


スポンサーサイト



コメント

非公開コメント